浄土真宗本願寺派 瑞光山 西念寺

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2024.06.20 今週からプール③

今週のプール②の続きです。

4日経って水泳大会が来ました。水泳着を着て、みんなが待ってるプールサイドに行きます。いじめグループは少女の前をさり気なく行ったり来たりするけれども、その目は少女の細く曲がった足に鋭く突き刺さるように注がれていました。
競技が始まりました。他の選手は全部プールから上がり、少女の番がきました。そのときにいじめグループは最前列に座りました。
「ただいまから、平泳ぎの競技を行います。第七コース何年何組、何々さん」と少女は名前を呼ばれました。元気よく右手を上げて、そのコールに答えます。
全校生の目が少女のからだに注がれています。「なんで、あの少女を、クラスの代表にしたんだ」という、クラスに対する非難の目もあったでしょう。また、「あの少女も少女だ。最後まで泳げるはずがないのに、なんで、平泳ぎの選手になったんだ」という錯綜した思いも少女のからだに注がれていました。
笛が鳴りました。身構えます。ピストルの音とともに飛びこみました。
顔を上げると、まわりにお友達の姿が見えます。一生懸命に二本の手で水をかきます。一本の足で水を蹴ります。けれども少女は泳ぎが下手です。1メートル泳ぐのに2分かかります。他の選手、選ばれた選手たちは速い。
少女を置いて一かき、一かき、距離を開けていきます。2メートル泳いだときには、一緒に飛び込んだ連中はプールの真ん中まで行っていました。
一生懸命に少女は泳ぎました。少女が4メートル泳いだときに、一緒に飛びこんだ連中は、全部向こう岸に上がっていました。他にだれもいない広いプールで少女は黙々として水をかきます。
シーンと静まりかえったプールで、いじめグループの番長が、大きな声で、「車に轢かれた蛙が、一本足で泳いでいる」といいました。そしたら子分たちが、みな大きな声で、「一本足、一本足」と後ろから罵声を浴びせます。その罵声を聞きながら少女は母の涙を思いました。「いま、辛い思いをしているのは、母さんも一緒だ。母さんもこの罵声が聞こえているだろう。どれだけ母さんも辛い思いをしているだろうか」。
これが親心に気がついたということでしょう。私が笑われているんじゃない。お母さんが笑われているんだ。少女はお母さんの涙を照らしていた仏様のりん灯を思いました。そのとき、自分の心に一条の光明が届いた気がしたといいます。
一生懸命に泳ぎました。8メートルの地点に行ったころに、体力の限界が来ました。手が硬直して動かなくなります。
顔がみるみる沈みだします。けれども「母さん、私はここまで泳いだわよ」という充実感が全身にみなぎっていたのです。顔が半分浸かったときに、「私は間もなくこのプールの底に沈むんだな」と観念したといいます。
そしてまなこを閉じて、水の中に身を横たえていたら、プールサイドにいた1人の男性が、服を着たまま、靴を履いたまま飛びこんできたんです。ずぶ濡れになったその人は、水の中で、少女の沈んでいくからだを、両手でしっかり支えてくれます。意識のもうろうとしている少女の耳元で、ささやきました。(続く)

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